一応設定☆(榛名お相手の愛を中心に笑いを叫ぶ不思議な話)
・都筑なずな(デフォルト名)
・武蔵野第一高校三年の生徒会長。ものすんごい美人で性格温厚な出来た人。武蔵野のマドンナで、野球部マネである涼音の親友。榛名の想い人だが本人は全く気付いていない。←
【 夏祭り 】(大河部長視点)
ウチの野球部に入った一つ年下のエース、榛名元希は野球の才能に溢れた、最悪に性格の悪い生意気なやつだった。中学時代に監督にオーバーユースで肩を壊されて以来、異常に怪我に煩くて毎日投げる球数も自分で決めるほど他人を全く信用していない奴で、入部当初もめちゃくちゃ怖かったんだよな……。
「はぁ……。都筑先輩、大丈夫かな」
それが今や恋するあんぽんたん。
何がどうなってこんな奴になったのか全く分からん。
それどころかマネージャーの宮下涼音も全く同じ顔で隣りで溜め息を吐いている。
「はぁ……。可哀相ななずな。助けに行ってあげたい」
一応、俺の彼女のはずなのに生徒会長に負けた気がするのは何でだろう……。
忙しく校内を走り回る生徒会長、都筑なずなの背中を見ながら考える。
夏休みを前にして、校内は今、夏祭りに向けて準備に追われていた。
もちろん俺達野球部は夏祭りどころではなく、県大会に向けて準備に追われ忙しくしていた。
夏祭りは生徒会主催で行われ、実行委員と共に盛大に催されるため、生徒会長はめちゃくちゃ忙しい。しかも今年は台風の影響で予定が狂ったため、かなり大変なことになっているようだ。
もちろん天候に左右されて忙しないのは野球部も一緒であるんだが……。
「手伝いたいのは山々だけど、夏本番を前にして私もそんな余裕ないのよぉ」
「分かります! 俺も何度、実行委員の選出に手を挙げたか……」
「おい、挙げたら駄目だろ?!」
「はい。何回挙げても先生に止められました……」
先生、ウチのエースがマジでごめん……。
盛大に嘆く榛名と涼音に頭を抱えた。
「お前ら、生徒会長好き過ぎだろ?」
「当たり前でしょ?! 好きに決まってるでしょ!」
「はい、大好きです!」
「……いや、榛名は俺じゃなくて生徒会長に告れよ」
告白しろと言われてテンパってどもりまくるあんぽんたんを余所に俺は似た者同士の二人に溜め息を吐いた。あとね、俺もそれくらい好きって言ってもらいたいんだけどね、彼女さん。
***
盛り上がる夏祭り準備を横目に、俺達は野球に全力で励んでいた。
それは夏祭り当日も同じで、練習試合に出掛け学校に戻った頃には終盤を迎えていた。
気を遣った監督が片付けが終われば各自解散と告げた。
けど、こんな時間に解散されてもなぁ。
気の遣い方が中途半端で困っている俺達を余所に、榛名は全速力で飛び出して行った。
「あれ、絶対生徒会長のトコだよな……」
「間違いないね」
「あぁ、賭けてもいい」
グラウンドで夏祭り最後の盆踊りの準備がされているのを見ながら残された部員でぼやく。
あいつ、ホント青春してるなぁ。
そんなことをぼんやりと思っていると、とんでもない一喝を入れられた。
「何ボーッとしてるの?! 追うわよ!」
「え……? マジで?」
「プライバシーもクソもないな」
「何言ってるのよ? 私たちがあの二人を応援しなくて誰がするの?」
もはや応援でも何でもなくただのデバガメだとは分かっていたが、涼音の勢いに呑まれた俺達は榛名を追いかけることになったのだった。榛名と生徒会長は案外すぐに見つかった。
屋上にいた二人を追い掛けて、俺達は部員みんなで隣りの棟の渡り廊下に隠れていた。
「都筑先輩、夏祭りお疲れさまです」
「榛名くんも試合お疲れさま」
うわー。この距離で声聞こえちゃうのかよ。
異様にドキドキしながら二人を見つめていると、俺以上に興奮している部員達を見て少し冷静になった。
「俺も何か少しくらい手伝えたら良かったんスけど……」
「何言ってるの。野球部期待のエースは試合頑張ってきたのでしょう? ならそれでいいのよ」
にっこり笑う生徒会長は紛れもなく美人だった。
これは榛名じゃなくても落ちるわなと思い、部員を見ると皆顔を赤くして撃沈していた。
生徒会長、恐るべし……!
「……でも先輩、疲れた顔してます」
「え」
えぇぇぇぇ?!
俺達は全員声が漏れないように口を押えるのが精一杯だった。
榛名の思わぬ行動にさすがの生徒会長も驚きを隠せないようだった。
あいつ、あれ無意識じゃね……?!
嬉しげに無言で俺をビシバシ叩く涼音に頷きながら榛名を見る。
榛名は生徒会長の顔を覗き込むようにして、その綺麗な顔に手を添えていた。
「「「(あいつ、チューするんじゃねッ?!)」」」
現場の盛り上がりは最高潮だったが、生徒会長は顔を赤くして後ずさろうとしてフラついた。
とっさに榛名が手を掴んで支えたが、より一層距離が近くなっている。
生徒会長は動揺してるようで真っ赤な顔で視線を逸らした。
……おぉ、珍しく榛名が押している。
部員達はジェスチャーでジタバタとしながらキスしろと小声で騒いでいるけどな、多分アレ絶対無意識だわ。
「あの、榛名くん、その、もう大丈夫だから……」
「足元フラついて、先輩、やっぱり疲れてるんじゃないですか!」
「あの、手……」
消え入りそうな生徒会長の声は突然始まった盆踊りの音楽に掻き消され、榛名も生徒会長も俺達も階下の楽しそうな輪に目を向けた。ウチの生徒たちや近所の子ども達が音楽に合わせてくるくると回りながら踊っている。盆踊りが始まったな。
再び視線を二人に戻すと手を繋いだままの榛名がぼそりと言う。
「先輩が頑張ったから皆、楽しそうですね」
「え……」
「ここにある笑顔、全部先輩が作ったんですよ。すごいですよね」
うわー……。
無邪気に笑う榛名を初めて見てドキリとした俺が言うのもなんだけど、生徒会長もとんでもないのに目を付けられたよなー。最終兵器みたいな笑顔の飛び出した榛名に俺達部員でさえもドキドキしてるのに、生徒会長は今どんな顔をしてるのだろう?
こちらに背を向けている生徒会長を見つめていると、生徒会長の携帯が鳴った。
「あ、島崎くんだ。多分、閉会式の挨拶のことかな……」
生徒会長、ホント忙しいのな。まだ仕事あるのかよ。
一気に現実に戻された俺達だが、榛名が島崎の名前を聞いて物凄い顔をしている。
生徒会長が榛名に謝って電話に出た途端、榛名は生徒会長の電話を取り上げた。
「え、榛名くん?!」
「あー島崎先輩? 俺ッス。都筑先輩、体調悪そうなんで帰ります。あとよろしくッス。じゃ」
「えぇ?!」
一気に言いたいことを言って電話を切った榛名は満面の笑顔で電話を返した。
榛名お前、あの島崎相手によくそんな思い切ったこと出来たな……。
「都筑先輩はちょっと頑張りすぎですよ。ちょっとくらいサボったって大丈夫ですよ」
「でも……」
「すげー不本意ですけど、ああ見えて島崎先輩は有能ですから何とかしてくれますよ」
本当に嫌そうな顔で島崎を褒める榛名に生徒会長は小さく噴き出して笑った。
どこかスッキリした表情の生徒会長は榛名に繋がれたままの手を持ち上げて綺麗に笑った。
「悪い後輩ね。でもどうやらすごく心配させたみたいだしサボっちゃおっか。私をここから連れ出してくれる?」
榛名は持ち上げられた手を見てようやく手を繋いでることに気付いたのか、真っ赤になっていた。それでも必死に頷いてるところはさすがである。
そのまま楽しげに屋上を去って行った二人に、俺達はドッと崩れ落ちた。
「何かすげーの見た気がする」
「俺も彼女と手を繋いで帰りてぇ!」
「え、じゃあ俺らも手繋いで帰る?」
「男同士で手繋いで何が楽しいんだよ、バカ!」
喧しい部員達を連れて俺達はいつものように騒ぎながら帰った。
翌日、あの目立つ二人が噂にならない訳がなく、学校中が二人を生暖かい目で見守っていた。
案の定、榛名は頭に花が生えていて、生徒会長に盛大にセクハラを敢行したことを今更思い出して喚いていた。おまけに榛名は島崎に絡まれていたが、俺は知らん。
ほんの少し、ざまあみろと思ったことは黙っておくことにする。
end.
この後、榛名は島崎に連行されてめっためたに口撃されます。笑
夏の恋愛、めっちゃ楽しいんですが、こいつら恋愛してる暇ないんじゃ……と
リアルに考えてしまい忙しすぎて何度泣いたことか。笑
でもまぁ久々にいちゃいちゃしてるの書けて楽しかったです!
ウチのサイト、恋愛系、超薄いんで。笑