一応設定☆(榛名お相手の愛を中心に笑いを叫ぶ不思議な話)
・都筑なずな(デフォルト名)
・武蔵野第一高校三年の生徒会長。ものすんごい美人で性格温厚な出来た人。武蔵野のマドンナで、野球部マネである涼音の親友。榛名の想い人だが本人は全く気付いていない。←
【先輩と後輩】
「(あ、都筑先輩だ)」
榛名が教室の窓からグラウンドに視線を向けると、体操服姿の生徒会長、都筑なずながそこにいた。今日の体育はサッカーらしく、なずなは何人かの女子と固まって試合中のクラスメイトを応援していた。長い髪を高く結っている姿はあまり見かけないが、体育中はよくああやって一つに結んでる。
「(腕しっろー、脚ほっそー、うなじやっべー……)」
机に肘を付いてひたすらなずなを不純な視線で追っていたら、パコンと何かが頭に降って来た。
「いって!」
「コラ榛名! 青春すんのもいいが、その熱心さを俺の授業にも向けろ!」
「無理ス」
「お前って奴は……! よし、その素直さに敬意を表して授業の最後に問2を解く権利をお前にやろう」
「えぇー?!」
満足そうに教卓に戻った先生と榛名を笑う友人達を睨んで、仕方なくシャーペンを握った。どうやら教科書を見る限り真面目にやらないと解けなさそうだ。
嫌々ながらも教科書に向かい、榛名は先走って問2の攻略にかかった。
最後にちらりとグラウンドに視線を向けると、なずなは楽しそうに笑ってクラスの男子とハイタッチをしていた。
「(あのヤロォォ!! 同じ学年だったら、あれはオレがしてたのに……!!)」
怒りにまかせてポキンと折れたシャー芯がどこかへ飛んでいき、前の席で小さくイテッという声が聞こえていたが、榛名は全く気付いていなかった。
「榛名ー、お前、さっきの授業で怒られたんだって?」
「あ? 何で秋丸が知ってんだよ」
「うちのクラスの大内、お前と同じ選択なんだよ」
大内? あぁ、そういや前の席の奴がそんな名前だったな。
榛名はふーんと相槌を返して、割り箸を割った。
昼休みになり、昼食を食べるため榛名は幼馴染で捕手の相方秋丸を引っ張ってラウンジに来ていた。
普段はもっと人の少ない場所で飯を食うんだけど、今日は特別。
クラスの女子から仕入れた情報をもとに、榛名はある目的の為に相変わらず秋丸を振り回していた。
「お前、ホント都筑先輩好きだよなー」
「てっめ、そんな大きな声で言うな!」
「心配しなくてもみんな知ってるよ」
「はぁ?!」
榛名のおかしな所はこんなに分かりやすいのに生徒会長を好きなことが誰にもバレていないと思い込んでいる所だ。数学の先生にすらバレているというのに何でこんなにバカなんだろう……?
榛名の顔をまじまじと見た秋丸は溜め息を吐いた。
そんな秋丸の態度にムカついた榛名は米神に青筋を立てる。
何かムカつく! コイツはたまに意味わかんねーこと言いやがる。
イライラしながら箸を進めると、ラウンジの窓ガラスになずなが映って榛名は目敏く振り返った。
「あれ、二人とも今日はここでお昼なの?」
「ハイ!」
「私達も今日はここでミーティングなの」
知ってるッスと内心返事をする榛名。
昼休みに生徒会がラウンジに集まって話をするという噂を耳にしたから榛名は秋丸を無理やり引っ張ってここに来たのである。
作られた偶然に喜んで榛名に向かってニッコリ笑うなずなに榛名は胸を撃ち抜かれる。都筑先輩、マジ犯罪級に可愛い……!
つられてヘラリと笑い返した直後、なずなの後ろから現れた人を見て榛名は顔が引き攣った。
げぇ!
「何、榛名、なずなの匂い探知機でも付いてんの?」
「……島崎先輩」
「え、やだ、私臭う?」
くるくると腕やら肩やらを匂っている都筑先輩はものすんごく可愛いけども、ニマニマ笑う島崎先輩は全然可愛くない! つーか、マジうざい!
なずなと同じ三年である島崎は性格はともかく無駄にカッコいいから女子にモテる。だが、嫌がらせなのかいつも榛名に対してなずな関係でちょっかいをかけてくるのだ。目の前で無駄になずなとベタベタする島崎が榛名は嫌いだった。島崎の従兄弟が桐青学園野球部にいるらしいが、本人は全く野球に縁がないようなので榛名は島崎に一切興味がなかった。
「変な臭いはしませんよ。むしろいい匂いがします」
「……え」
「はいはい。変態は放って置いて、なずな、ミーティングの時間だ」
「島崎くん! もう、ごめんね、榛名くん。またね」
手を振ったなずなの背中に手を回して歩く島崎がニヤリと笑いながら榛名を振り返った。相変わらず厭味ったらしい視線が妙に腹が立つ。
「(羨ま……、違ェ! セクハラだろ、それ!!)」
どっちが変態だと内心で叫びまくる榛名に掴まれている箸がミシミシと音を立てる。余計なことをしてくれる島崎に溜め息を吐きながら秋丸は宥めようと声を掛ける。だが榛名の怒りは収まらない。
何がムカつくって島崎先輩が生徒会副会長って所がだ!
ベタベタとくっつく島崎に榛名はそれ以上くっ付くなと恐ろしいほどの視線を向けるしか出来なかった。
「榛名、顔怖いぞ」
「……何でオレ、同じ学年じゃなかったんだろ」
「……熱でもあんの?」
ちっげぇよ!! と吠えた榛名を秋丸はまだ怪訝そうに見ている。
だってよー、同じ学年なら都筑先輩じゃなくてなずなって名前で呼んでも変じゃないし、体育だって同じグラウンドで応援してもらえるかもしんねーんだぜ?
1年出遅れた差はこんなにも大きくて榛名の気持ちを暗くさせた。そう思うと島崎のポジションが羨ましくて仕方がなかった。
「大丈夫?」
「え……、えぇ?!」
どれだけ思い悩んでいたのか気が付くと目の前になずながいた。顔を覗き込んでいるなずなとの距離があまりに近くて榛名は思わず仰け反った。
「(ヤバイ、ヤバイって!! この距離はヤバイっす!!)」
慌てて向かいに視線をやると、呆れた表情の秋丸がいてその背後の時計の長針がかなり進んでいる事に気付く。どうやらかなりの時間トリップしていたらしい。なずなの背後で腕を組んで見ていた島崎は目を細めて言った。
「なずなが声掛けても返事しないなんて、いやらしいことでも考えてたんじゃないのー?」
「島崎くん! あなたじゃないんだから!」
「お前、ひでぇ」
「どっちが! どうして榛名くんに意地の悪いことばかり言うの?」
都筑先輩がオレを庇って怒ってる……。
小さな背を見上げてその珍しい光景に榛名は感動していた。その姿を目に焼き付けるように眺めていると、なずなが振り返って榛名に視線を合わせた。
「榛名くん、やっぱり体調悪いの? 顔が赤いよ」
「え、いや、あの……!」
「熱は……」
伸びてきた細い腕に情けないほどビクリと身体が震える。なずなのさらっとした手が榛名の前髪を潜り抜けて額に触れた。ひんやりとしていた手が榛名の体温を奪って同じ温度になる。突然のその行為の衝撃といったら……。
「オレ、死ぬかもしんない……」
「え?! 大変!! 保健室に行こう?! 私、肩貸すよ?」
榛名の心からの呟きを拾ってなずなはどうしようと混乱しながら島崎を見た。榛名の心中を知る島崎は面倒そうに溜め息を吐いて、勝手にやってろとラウンジを出て行ってしまった。
「あー、都筑先輩。俺が榛名を保健室連れて行くんで心配しないで下さい」
「秋丸くん、でも、私……」
「あとで報告しますから」
秋丸は赤くなって固まっている榛名の腕を取って荷物を掴むとラウンジを出た。引っ張られながらドキドキと煩い心臓と宥めていると、秋丸が溜め息と一緒に文句を吐いた。
あーもう! 嬉しすぎて舞い上がってる自分も、そんで心配掛けてる自分も何もかもがハズい!
「あのさぁ、榛名。同学年もいいんだろうけどさ、後輩は後輩でしか味わえないものだってあるとオレは思うよ」
そこんとこどうなの? と榛名の顔を見た秋丸はすぐに噴き出した。何だかムカついて榛名はギロリと睨むが、真っ赤な顔じゃ全然怖くないと秋丸は余計に声を上げて笑った。腹が立つけど、同じように後輩も悪くないと思った榛名の内心を秋丸は見抜いてるようだった。
「(……赤いのが退いたら、もっかい先輩に会いに行こう)」
end
何かいろいろフィクション盛り込んだけど楽しかったから無問題!笑
久々の榛名楽しかったです!榛名視点いかがだったでしょうか。
一人称で書くとかなり柄が悪くなったのでこんな中途半端な感じに。笑
需要あるのか知りませんが、楽しければ感想下さると嬉しいです!
では。